リビング椅子の座面張り替え

リビング椅子3脚をお預かりしました。座面の傷みが原因です。表面がキズや擦れによって表面色が無くなっているのがご覧いただけます。

座面に使われているのは本革でした。本来の革を活かして補修することもできますが、今回は座面の張り替えをすることになりました。

合成皮革の場合は、サンプル帖からお客様に色を選んでいただきます。今回は元々の色に近い色をご選択いただきました。

張り替えた後の全体です。新調した座面がスッキリとしたのがご覧いただけます。

2脚目も同様な状態です。
座面の作りは、座面とその左右が異なる3分割になっています。座面の手前左右に縫製されているのがご覧いただけると思います。また、座面の下に一本の革があり、こちらはおそらく飾り革です。

合成皮革への張り替えと、塗装による座面の色補修の場合、張り替えの方が安くなる場合があります。

座面張り替えは1枚革で張り替える事をお客様にご了解いただいています。
元々の作りのように、座面左右を分割して縫製する場合は加工時間が必要になりますので、金額はプラスになります。しかし、座面がそれほど高くない場合は1枚革で張り替えた方が丈夫で安く仕上げられます。

座面下に一本のラインがありましたが、予想通り飾り革でした。お客様には事前に作り方をお話しして「特に必要ない」ということでしたので飾り革は入れていません。
もし飾り革を入れた場合は、座面を一周する革の長さが必要になり、それに芯材を入れて縫製した後に取り付ける必要が発生します。座面下に飾り革を入れた場合、座面と木部との隙間が少なくなりますので、そこに埃が堆積しないという効果はありますが、先端にブラシを付けた掃除機で一周清掃すれば埃はほとんど堆積しません。

取り外した座面です。裏側から見るとどのような作りかが判ります。

予想していた飾り革は座面革の下に取り付けてありました。

飾り革だけを取り外すとこのような作りです。全周に渡って使われていたことがご覧いただけます。長さは160cm以上なので、もし飾り革を作るとすると大きな革が必要になりますので、プラスの金額もかなり必要になります。

3脚目のリビング椅子も同様の状態です。
リビング椅子の良し悪しは座面もさることながら、木部の作りが重要です。座面下に前足2本を支えている木が見えますが、この加工はかなり手間が掛かっています。
木部の状態はほとんど軋む(きしむ)事も無く大変しっかりしており、今後も長く使えそうな状態でした。

座面は一番傷むところなので、交換して使う事をオススメします。本革の方が確かに丈夫なのですが、表面の擦れは合成皮革の方が丈夫です。ただし、鋭利な物で切れが入るのは合成皮革の方が弱くなります。

弊社で使用している合成皮革は、ハードに使われているような場所に多く使用されている合成皮革です。安い合成皮革とは2倍以上の価格差がありますが、耐久性を考えて良い素材を使用しています。完成後の見かけは変わらないのですが、長くお使いいただくには、素材の良い物を使うことが重要でという弊社の考えからです。

今回使用した合成皮革を表と裏が見えるようにしてみました。下のブラック色の合成皮革は、弊社に残っていた、交換したソファに使われていた座面です。
ブラック色の合成皮革も表と裏が判るようにしています。

弊社が使用している合成皮革の糸目と、他の合成皮革の糸目をご覧いただければ違いがお判りいただけます。
糸目が細かいという事はそれだけ密度が高いという事です。当然密度が上がれば強度が上がります。伸縮性も持っており合成皮革とは言っても、本革と遜色ない高級素材です。

3脚目も完了しました。
木部の作りが「良い」か「悪い」かの判断は「軋み(きしみ)」が重要です。経年劣化した椅子で軋み(きしみ)が発生していると、木部を再度組み立て直す必要があります。その場合、座面張り替えにプラスの費用が発生してしまいます。
しかし、木部に全く軋み(きしみ)が発生していない物は今後も長く使っていただけます。そのような見方は、お客様にもお話させていただきます。椅子は木部がしっかりしていると丈夫なだけでなく、座っていても安心感が違います。人も年を取りますので、そこそこ重量がある方が「座る時」「立ち上がる時」の安定感が良くなりますので安心して使えます。
今回も納品時に「大変キレイになった」と喜んでいただけました。

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