TOD’S手提げバッグの色補修

TOD’Sの手提げバッグをお持ちいただきました。真新しいバッグを保存していた時に、持ち手を下げて本体に付く状態だったために持ち手の色が本体に移ってしまったという事でした。

背面も同様に持ち手の黒い筋が付着しています。

ピックアップ撮影すると、黒い線が円弧を描いて付着しているのがご覧いただけます。

クリーニングだけで取れる可能性もありますので、まずはクリーニング液を使って付着している黒い筋をクリーニングしてみましたが、残念ながら黒い筋は取る事が出来ませんでした。

その場合、下地処理で使用するアルコール液に移行するしかありません。

しかしながら、下地処理用のアルコールを使うと、付着している黒い筋も取れますが、表面の色も落としてしまいます。(上の写真は、まだ手を付けていない状態です。)
革は、多くは販売する前に各種の色を付ける事で販売されています。染色というのが正しいと思います。弊社が行っているのは塗装です。染色と塗装の違いについてはご自身でお調べください。

本体色に合わせて色を調色しますが、このような淡い色はなかなか大変です。こちらの色は「原色の白」ではありません。調色の結果、本体色を再現できました。

調色はどのようにするかというと、原色の「黒」「白」「赤」「黄」「青」という5色を混合して色を作っていきます。

今回使用した原色は「白」「赤」「黄」そして「黒」の4色でした。
「えっ?黒を入れるんですか?」と思われた方もおられると思いますが、調色していると最初に入っている色を経験と感覚で掴み取らねばなりません。

万一「黒」を入れないと、本体色にはなりません。もちろん、100%色を再現できているかどうかと言われれば、厳密にはバッグを作ったメーカーの色とは異なると思いますが、限りなく近づけるという方法で色を作っています。

黒い筋は完全に無くなっています。また、周辺の黒革に調色した色は付着しないように塗装しなければなりませんので、非常に注意しながら塗装を進めています。

今回、ブランド名が入った「タグ」は塗装していません。黒い筋が入っていなかったことと、タグの周囲に黒の色が入っており、施工に難がある事。そして一番大きいのは真新しいバッグでしたのでタグには傷みが無かったことです。
塗装した「本体」と「タグ」の違和感はありますでしょうか?おそらく違和感は全く感じられないと思います。当然、光沢も合わせていますので違和感の発生していない理由はそちらにもあります。
お客様にお渡しした時も「タグは塗装していません。」とお伝えしましたが、違和感が出ていないためご満足いただけました。

Follow me!