2025-09-05 / 最終更新日時 : 2025-10-26 knishikawa こんな補修も 本革ビジネスバッグの内袋交換 ビジネスバッグの修理をご依頼いただきました。長く使われているのが判る本革バッグでした。 最初に修理(リペア)したい箇所をお聞きすると、底面の革が切れて穴が開いている箇所でした。かなり大きな穴と切れでしたので、こちらは内側から修理(リペア)する必要があります。 もう一つ、お客様のご希望は内袋の交換でした。素材はデニム生地のようです。 内袋を引き出してみると、大きな穴が開いており、こちらは交換するしかない状態でした。内袋を交換するという事は、底面の革の穴開きは施工しやすいという事です。 内袋にはファスナーで開閉するポケットと革で作られた小さなポケットの2つのポケットがありました。「革のポケットだけは新しい物に取り付けて欲しい。」というご要望でした。ファスナーポケットは、無くなっても良いということで修理(リペア)方針が決まりました。 しかしながら、もう一点大きな傷みがありました。ショルダーベルト下の根本です。こちらの施工方法は弊社にお任せいただくことになりました。 まずは内袋の取り出しです。こちらの袋をさらに分解して一枚の布にした後に採寸して、新しい布を縫製します。そのため修理(リペア)というのは、すでに決まった寸法にカットする量産と違って時間は倍掛かるのです。 2つのポケットを裏側から確認します。ファスナーポケットの方は傷みも無く、そのまま新しい布に移植できそうです。その下に革ポケットを縫製している糸も確認できました。 寸法を確認して2つのポケットを新しい布に移植して取り付けました。ファスナーもオリジナルの物をそのまま使っています。内袋に使った布は帆布を使用しました。最初はデニム生地で探していたのですが、あまり良い物がありませんでしたので、帆布を採用することにしました。 内袋をバッグに縫製し直して内側を撮影したものです。当然穴は開いていません。縫製方法はオリジナルと同じなので、縫い目はオリジナルと同じです。 こちらはショルダーベルト下の根本をピックアップ撮影したものですが、こちらはほとんど傷みの無かった側です。そのため、縫製はオリジナルの革の糸穴をキレイにトレースしているのがお判りいただけます。 横から撮影すると、ショルダーベルト下の根本には舌のような革があるのがご覧いただけます。 しかし、反対側の傷んでいたショルダーベルト下の根本には舌のような革はありません。分解して判ったことですが、こちらは舌のような革は切れてしまっていたようです。ベルト根本の革に傷みはありませんでしたが、オリジナルはショルダーベルト下の根本は縫製のみで止められていました。 しかし、縫製だけでは今後も長くお使いいただくには大変不安でしたので、大型の両面カシメで根本革を強化することにしました。ただ、オリジナルからの違和感を極力無くすために、カシメ金具は吊り金具と同色の艶消しゴールドを使用することにしました。同様に傷みの無い方にも同じ処理をして強化しているのは上部の画像からお判りいただけると思います。 底面の穴と革切れはこのようになりました。少し筋が残っていますがこの程度はご容赦いただいています。内側から施工していますので、再度穴が開くことは無いと思います。 お客様にお渡しする時に、一番最初にご覧になったのは底面の穴と革切れの状態でした。ご満足いただけたようで、次は内側をじっくり確認されていました。しかし、苦労したショルダーベルト下の根本は気にされていなかったため、弊社から両面カシメの追加加工をお伝えしました。両面カシメの色を合わせてあったので、特に違和感は感じられなかったようで喜んでお持ち帰りいただきました。おそらく、お客様にとって大変思い入れのあるビジネスバッグなのだと思います。今後も長くお使いいただけることを祈念しています。