財布の引手補修

お持ちいただいた財布です。写真なので大きさが判りませんが、小銭用の財布で、本体には傷みはありませんでした。

お持ちいただいた理由はスライダーに付いている「引手」が切れてしまったことです。

ピックアップ撮影すると引手の状態がお判りいただけます。革を鏡のように引手の形にカットして金具(Dカン)に差し込んで二つ折りにした後、カットした形に縫製して二枚になる端面(コパ部)はコパ塗料で処理されています。

ちなみにDカンは、元々こちらの画像のように直線部分が引手側になっているのが正しい方向です。

切れた引手だけをピックアップ撮影しました。革は一枚革で、内側には布などの補強はされていませんでした。

引手の厚さを確認すると切れた部分(左側)はそれほど厚くない革です。実測すると0.7mm程度でした。

施工後のピックアップ画像です。
オリジナルの革を表面に使用して、内側に合成皮革を接着し強度を上げ、それをDカンに通して、オリジナルと同じ縫製を行って、コパ塗料で周囲を仕上げています。コパ塗料を周囲に塗装している理由はオリジナルと同じ仕上がりにする以外に内側に接着した合成皮革の側面の色を隠す役目もあります。

切れたオリジナルの革の縫製は糸を抜いた穴に沿って手縫製して仕上げています。ここまで手作業を重視している店舗は少ないと自負しています。

なぜオリジナルの革を使うかといううと、財布本体との親和性が保たれるからです。安く施工する場合は下記の方法がありますので、ご発注時にご選択いただければどの方法も施工しています。
①適当な革をオリジナルと同じような形にカットしてDカンに入れて接着剤で接着
②接着だけでは剥がれが心配な方は接着した革の中央に3目~4目の縫製追加
③さらに強度を上げるには革の裏に合成皮革を貼る事も出来ます
①~③になると当然施工費用は高くなります。その点はお客様とのお話し合いで決めていますので、ご安心ください。

今回、お客様はオリジナルの引手を使うことで「違和感無く強度を上げる方法」をご選択いただきました。お持ち帰りになるときも気に入っていただけたようでした。