2022-09-07 / 最終更新日時 : 2022-10-13 knishikawa こんな補修も GUCCIベルトの全体リペア グッチのベルトをお持ちいただきました。擦れはありますが、ベルトの表面としてはそれほど酷いというわけではありません。お客様のご要望は「全体に補修して欲しい。」という事でした。表面革と裏革は同等の物が使用されており、分解する前でも3枚合わせベルトのようでした。 もう一つのご依頼は「長さを短くして、自分で開けた穴を元の3つの穴に戻して欲しい。」というものでした。ベルトの長さ調整はバックル側をカットすれば問題ありませんが、空いた穴を元に戻すのはかなり大変です。 サイドの糸を切って分解していきます。中心にあるのがベルト芯です。2枚の芯のように見えますが……。 実はベルト芯がボロボロになって分解しており、開腹と同時にベルト芯が崩れてしまったようです。 ベルト芯は厚紙のような材質です。引っ張り強度などベルトの剛性を上げるために入っている物ですが、元々が紙と同様の素材のため湿気には強くありません。 分解したベルトを撮影してみました。 今回はベルト芯の傷みが一番の問題でした。ベルト芯は部品として入手できますが、今回は中芯にもう1枚革を入れる事にしました。ベルト革として使えるような革を0.7mmに革削ぎして中芯として使用しています。この時点で、ベルト穴に柔軟なパテを使って穴を塞いでおきます。 サイドの糸を縫製しました。穴の塞がり状態もご覧いただけます。しかし、この段階はパテによる穴埋めだけなので違和感は否めません。 施工完了後のベルト裏をカットしたバックル側で撮影しました。ベルト押さえの革リングはオリジナルのままですが、それを止めている革は弊社でカット作成したものです。 裏側にあったGUCCIのブランド名は塗装せずに残してあります。その周辺ギリギリまで手塗りしていますが、違和感を感じられますでしょうか? 先端はこのように仕上がりました。一度開腹していますので、端面はエッジ(コパ)塗料でしっかりと作っています。ピックアップ写真なので、若干の凹凸がありますが、こちらは仕方ありません。 異なる角度で撮影したものです。先端のRと直線縫いはそれほど違和感は出ていないと思います。今回はミシン縫いで仕上げていますが、元々の糸穴を極力トレースするように慎重に行っています。 バックル側の表面の仕上がり状態です。ベルト押さえは未加工なので、そちらと比較しても違和感は出ていないと思います。光沢合わせを行っていますが、どのように感じられますでしょうか。 完了後の全体です。ベルト芯が蘇りましたので、ベルト全体にあった撚れは無くなっています。塞いだ穴もどこにあったのかが判らなくなっていると思います。ベルトの70mmカットと穴塞ぎによって。元々のベルト穴でキチッと使用できる事をご確認いただきました。お客様には、奥様との大切な思い出の一品だったようで大変に喜んでいただけました。中芯に革を使うことは受付の時点でお話しています。ただ、長めの革は半切で買うことになりますので、材料費は高くなります。そのため、お支払いいただいた金額も新品ご購入の時よりは安かったとしても、修理代としては高い方だと思います。しかし、思い出は金額換算できません。お客様にお持ち帰りいただいた時のお顔は、金額以上のものになっていたことが伺えました。今後もこのような仕事をしていきたいと思っています。 Follow me!