BURBERRYコートの革部補修

お持ちいただいたバーバリーのコート。
息子さんが古着の中から気に入ってご購入されたとの事。「弊社は革製品がメインなのに。」と思っていたら「コートに縫い付けられている革ベルトを補修して欲しい。」という事でした。

本革ですが、表面に色が無くなっているのがご覧いただけます。

反対側も同様の傷みです。革は元々の動物の革色ではありません。加工して色を入れている物が多く、こちらも加工して色を入れている物でした。

左右のベルトを取り外してみるとこのような物でした。

裏側も同様に傷みが見られます。革表面の色落ちというよりは革表面が剥がれている状態です。金具のある方はエッジ(コパ)が傷んでいます。
2枚合わせの革を縫製して作られており、片側には金具を使用しています。

作り直した革ベルトの、取り付け後の状態です。金具は元々取り付けてあった金具を使用しています。ただしカシメ金具は一度外すと使えませんのでアンティークゴールドの小型の両面カシメを使用しました。それほど違和感は無いと思います。

元々、ベルト裏側には糸が見えない方法で縫製されていました。
服を作られている方はお判りになると思いますが、同様の取り付け方法を選択するとコートを分解する必要が発生します。お客様にもご説明し、糸が見えない方法は金額が高くなることをご説明しました。
お客様のご選択は「裏に糸が見えない縫製。」でした。

反対側のベルトも新しく作ったベルトにに交換しました。糸が若干蛇行しているのがご覧になれます。大きく蛇行しているようですが実は1mm程度です。小さな部品の場合、ミシンの一目がズレると次の一目で一気に補正することはできませんので、徐々に軌道を修正する方法を採ります。

裏側の縫製は同様に、裏に糸が見えない方法です。

左右ベルト取り付け完了後の画像です。
ベルトは2枚の革を使用していますが、工程数はかなり多くなります。
➀最初に革塗装を行います。
②サイズを合わせて片側2枚を切り出します。
③二枚合わせで縫製を行います。
④エッジ塗料を使って擦れに強くします。
⑤エッジ塗料の上に色合わせと保護の塗料を塗ります。
⑥ベルト穴を開けたり、金具を取り付けます。
⑦コートを開腹して裏側に糸を貫通させないようにします。
⑧作り変えた本革ベルトを縫い付けます。
⑨コートを元の状態に縫製します。
それ以外にも「革の選択」や「塗料の調色」「糸の購入」「両面カシメ金具の購入」なども行っていますので、実際の工程はさらに増えます。
弊社はオリジナルに近いリペア(修理)を最優先に考えます。その場合、金額的には高くなる場合もあります。

こちらのコートは「息子が気に入って初めて購入したコートなので、なんとか直してあげたい。」というお客様の想いで弊社にお持ちいただきました。今回、本革ベルトは弊社で作成しましたが、ベルトのコートへの縫製は技術の高い方にお願いしています。洋服の縫製と革ジャンなどの縫製は必ずしも同様の縫製技術ではありません。こちらは最初からお客様にご説明しています。弊社は「仕上がり重視」か「コスト重視」かを確認して見積りを行っています。今回は、金額は高くても元々の良さを失わない方法をご選択いただきました。
無事にベルトが新しくなり、糸が貫通していない取り付け方をご確認いただき、笑顔でお持ち帰りいただきました。

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