ヴィンテージバックのベルト穴開き補修

HTCのヴィンテージの本革バックをお持ちいただきました。ヴィンテージというだけあって、見るからにその雰囲気があります。

革はヌメ革だったと思われますが、熟成されて本革の色が渋い色になっています。そのバックに数多くの装飾がされており、ヴィンテージ感はハンパありません。

背面もヴィンテージ感に溢れており収集家にとっては堪らない造形なのでしょう。このようなバックの場合、ヘタにリペアをお受けするとヴィンテージ感を損なってしまう場合があります。

今回は、お客様のご要望をしっかりお聞きしないと、とてもご注文をお受けできそうにありません。

お客様のご要望は「ベルトに開いた穴を塞いで欲しい。」というご要望でした。バックルの上に見える穴ではありません。写真に写っている、かなり上部の穴ですがお判りになるでしょうか?

ピックアップ撮影すると、穴の状況がお判りいただけると思います。金具の跡がついていますので、穴はショルダーベルトを短く使いたいために開けた穴と思われます。

穴が開いていますので、背面の処理も同時に行わなければなりません。
お客様には「完成の状態のご要望」をお聞きしました。穴を塞ぐといっても「とりあえず塞がっている。」という状態と「ふーん。穴塞いでいるの?」という程度まで仕上げるどちらの方法を選択されるかをお聞きしました。お客様のご要望は「できる限り塞いでいる野が判らない程度にして欲しい。」というご要望でした。

革の裏側は色を合わせるのはもちろんのこと、ショルダーベルトとして使ったときに違和感が出ないように触り心地が重要です。しかし、背面はさすがに「塞いだのは判ってしまう。」状態が精一杯でした。

表側はどうでしょうか?拡大してご覧いただくと確かに穴を塞いだ跡が見ていただけると思いますが、如何なものでしょう?

少し離れたピックアップ画像ですが、少し離れるとほぼ判らない状態になっているのがご覧いただけます。
表側は段差が出ないことと、色合いを周辺に合わせることに注意して仕上げています。塗料の調色を繰り返し行いながら淡い色から徐々に表面の濃い色に合わせていますので最初の色からすると10色程度になります。表面だけで5色程度の色で描くように仕上げました。
完了したバックをお客様にお渡しする時に、お客様のイメージ以上に仕上がっているかはいつもいつもドキドキしますが「ほとんど判らないですね。」と喜んでいただけました。どうやらイメージ以上の仕上がりになっていたようです。
穴を開けるのは工具を使用できますが、穴を塞ぐのは完全に人の感覚に頼らざるを得ません。そのため簡単そうで簡単では無いというリペアなのです。

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