Bottega財布のパイピング補修

ボッテガの長財布をお持ちいただきました。写真の下から上に上がるにつれて色が濃くなっているタイプでした。

表面の3色を塗りなおすとなると色の調色も大変になりますし、ボッテガのような革を編んだタイプは塗分けが重要になります。

お客様が気にされてお持ちいただいた理由は、周囲のパイピング切れでした。表面の色では無くてホッとした瞬間でした。

切れの少ない箇所も少しはありましたが、上下左右のパイピング6カ所は擦れによってパイピングが切れていました。

開閉を繰り返す底面の左右も大きくパイピングが切れていました。こちらは財布を閉めた時に引き手が見えている方です。

反対側のパイピングも大きく表面の革が擦れて切れてしまっているのがお判りいただけると思います。ちなみにパイピングしている革の色はファスナー布のグレーに近い色だったと思われます。

パイピングした後の同じ場所をピックアップ撮影しました。綺麗に補修できているのがお判りいただけます。

パイピングの補修は擦り切れていた場所だけを行っているいるわけではありません。周囲のパイピングすべてを補修しています。表面の色が3色でしたので、パイピング部の色は徐々に濃くなっていたと推測して、表面の一番濃い色よりも濃くすることにしました。最初はファスナーのグレー色にしようと考えていましたが、表面の一番濃い色は濃いグリーンでしたので、さらにグリーンを濃くすることにしました。

引き手と合わせて見ると、同系色の色というのがお判りいただけます。色合いというのはお持ちいただいた時点で、修理を行う私たちにはその情報がほとんどありません。そのため、お客様とお打ち合わせさせていただく内容は、多くが色合いの話になります。

パイピング補修は、必ず擦り切れた革の代わりに薄い革を内側に貼り付けてから行っています。そうすることで、再度擦り切れが発生した場合も表面に傷みが及ぶことが無いからです。

パイピング補修は面積としては非常にわずかなのですが、下処理として内側に革を入れて、その後柔軟なパテを使って成形して形を整え、最後に光沢や色の微調整を行う表面塗料を塗布することになります。

しかも、機械(塗装用のスプレーガン)などは使えません。全て手塗りになりますので結構時間のかかる作業です。
また、今回の財布のように色が明るいところもあると、なおさら慎重に作業を行う必要がありますので、わずかな面積と考えないでいただきたい箇所のひとつです。

お客様にお渡しするときに、パイピング部を少しグリーンを強くしたことをお伝えしましたが、特に違和感は感じられていないようでした。
それよりも、多くの革が擦り切れたパイピング箇所を丹念にご確認されていたようでした。どうやら気に入っていただけたようでした。
ちなみに、表面を3分割で塗装し直すことは可能ですが、かなりの部分を手作業で行う必要がありますので、1色で行う塗装よりもかなり高くなってしまいます。今回は、表面塗装が無かったのでお客様にご依頼いただけたと思います。

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