2023-06-15 / 最終更新日時 : 2023-07-11 knishikawa こんな補修も エイ革のかなり傷んだ財布修理 エイ革の財布をお持ちいただきました。かなり傷んでおり、今までの財布修理より桁違いに修理時間が多くなりそうです。 エイ革は固いので、表面の傷みは少ないのですが、あちらこちらに多くの傷みがありました。 周囲は革が無くなって、その内側の繊維が出てしまっている所が多数ありましたし、ツブツブに見えている表面革が外れてしまっている箇所が散見されました。 内側の革部分は傷みが激しく、糸が無くなってしまった箇所も多く見られました。内側はお客様のご要望により、今後も長く使えるように全てを修理(リペア)することになりました。 ピックアップ撮影するとこのような感じです。財布として、今後も使えるようにするには、内側の修理(リペア)にかなり時間が掛かりそうです。 そして、大変に悩んだのが表面革のツブツブの無くなっているポイントです。画像でもハッキリと表面革か無くなっているのがご覧いただけると思います。手を入れないで、そのままにしておくと、表面革(ツブツブ)の無くなった周辺からポロポロと革が脱落しそうでした。 表面革には、連続で脱落している部分もありました。お客様との話し合いで、表面革が脱落しないように、クリア(透明)の接着剤(エポキシなど)を周囲に充填する事をご了解いただきました。 さらに下は、革切れが発生しており、糸も無くなっていました。 修理(リペア)完了後はこのようになりました。革が無くなった所には、内側に革を入れて縫製後にエッジ(コバ)塗料を使ってコバを再作成しています。表面革のツブツブが無くなった所には、端革を購入してその革を加工して入れる事で、接着剤(エポキシなど)だけではない補修を行っています。少し違和感はありますが、表面革が無くなった状態よりは良いと判断して手を入れました。修理箇所によっては、端革から革を移植できずに、塗料のみで現状から表面革が外れないようにした箇所もあります。その部分が一番違和感を出していますので、弊社としての限界に近い修理(リペア)になっていると思います。もちろん、さらに時間を掛ければ違和感をより少なくすることは可能ですが、費用面で高くなってしまいます。今回はお客様とのお話で、ここまでの修理(リペア)と決断しました。 表面革のツブツブが無くなっている所も同様に、接着剤を入れた後に端革からカットした同じようなサイズの表面革を入れています。どこに入れたかは「Before」の画像と比較いただければお判りになると思います。ちなみに端革を使ったのは修理費用を抑えるためです。財布を作成できるほどの大きなエイ革は革専門店で¥167,000で販売されていました。良いエイ革は本当に高価なのです。今回の修理は、その価格より安い費用で行っています。 内側の修理(リペア)後はこのようになりました。エッジ(コバ)をキチット作成することで、一番傷んでいた箇所も本来の強さを取り戻しました。もちろん無くなった糸も、きちんと縫製しています。 全体的にはこのような仕上がりです。革が切れた部分は補修して、糸が無くなっている部分は手縫製により再縫製を行って、元々の状態に戻す施工を行っています。 少し離れて撮影すると、違和感はかなり軽減されると思いますが、手を入れている部分はお判りいただけると思います。この修理(リペア)方法をお客様に気に入っていただけるかはお渡しする時しか判りません。 エッジ(コバ)補修は全周で行っていますので、スッキリと仕上がったのがご覧いただけます。 表面革のツブツブが無くなっている箇所の補修は、弊社としては冒険の手法でした。違和感が出ない様に心掛けて施工していますが、お客様のイメージに合わなかったら台無しになるからです。結果として、お客様には大変喜んでいただけました。「これで、また長く使えますね。」と言っていただけたのが、気に入っていただけた事を表わしていました。こちらの財布は、お客様が海外に旅行された時に購入された記念のお品でした。「購入したときよりも、今回の修理代の方が高いです。」と言っておられました。しかし、再度海外に行って購入するよりははるか安いという事からご発注いただいた一品です。思いの詰まったお品を、お客様のイメージ以上に修理(リペア)することが弊社のひとつの目標になってきました。今回のように「購入代金より高い。」という修理は、それほど多いわけではありませんが、年間に数点はあります。「お客様の何とか使い続けたい。」という思いを今後も大事にしていきたいと思っています。 Follow me!