chloe長財布の全体補修

クロエ長財布をレターパックプラスでお送りいただきました。
ブランドの下の方にポチッと黒く見えるところがあり、お客様はその点をかなり気にされていました。

背面はそれほど傷みが見られませんが、左上をご覧いただくと、折り部には傷みが発生しているのがご覧いただけます。

内側も傷みは少ないのですが、色ムラはなんとなく発生しています。

表面をピックアップ撮影すると、擦れによって色が落ちている部分が所々に散見されました。

反対側も同様にピックアップ撮影すると表面に擦れが見られます。
しかしながら、エッジ(コパ)部の黒いラインは擦れで無くなっているのではなく、デザインとして黒いラインが描かれているようです。

財布を開いてみると折り部にも所々に擦れで色が無くなっているところが散見されます。

他の傷みを確認すると、小銭入れ部のファスナー(チャック)の布部が切れそうになっているところが数か所ありました。写真ではほとんど判りませんが、布切れを起こしてしまうと結局ファスナー(チャック)を交換するしかありません。
また、ファスナー(チャック)を開閉するために、革で作られた引き手がありましたが、結びの場所で動いてしまう状態でした。

内側のファスナー(チャック)交換は長さは短いのですが、元々の組立順序は最初の作業に近いので、本来ならば分解範囲が広くなってしまいます。

今回、お客様が気にされていたのが小銭入れ部の内側の布切れでした。
布切れ部を補修するためにはファスナー(チャック)を外すしかありません。
それならばファスナー(チャック)も交換しましょう。という事で、リペア方針が決りました。
レターパックプラスでお送りいただいた一品でしたので、お打ち合わせは全て電話で行っています。

ファスナー(チャック)交換後はこのような状態です。
ファスナー(チャック)の左側が完全にしまっていませんが、こちらはオリジナルと同じ止め方です。施工前の画像と比較いただいても同じ止め方というのがお判りいただけますが、こちらはお客様のお手元に戻った時にお客様も気になられた部分です。
「オリジナルと同じ方法にしています。」とご説明すると「まずはそのまま使ってみます。」という事になりました。万一不具合がある場合は改善方法もありますが、まずはオリジナルを重視するのが弊社の方針です。

ファスナー(チャック)上の革の引き手は糸を一本入れることで、結び目が動かないようにしておきました。

側面の擦れていた部分も回復しているのがご覧いただけますが、あまり変化は感じられないのではないでしょうか。

表面の擦れで色が無くなっていた部分は無くなっていますが、こちらも十分に比較いただかないと判りにくいですね。

同様にピックアップ撮影したところを比較のために掲載しておきます。
黒いラインがありますが、こちらは全体を塗装した後に手塗りでラインを描いています。表面側のエッジ(コパ)のみに黒いラインが描かれていたと思われますので、そこだけを塗装するのは結構大変です。プラモデルなどを作ったことがある方にはお判りいただけるのではないでしょうか。

内側も全体を塗装していますので、全体の色ムラは無くなっています。黒いラインも塗られているのがお判りいただけますでしょうか。

全体塗装していますので、擦れや色ムラは無くなっています。黒いラインはこの画像が一番お判りいただけると思います。

色合いについては、なるべくオリジナルに合わせるべく常に努力していますが100%の色は作ることができません。そのため、お客様には色合いや光沢のご希望を十分に伺い、お客様のイメージ色に合わせる方法を取っています。また、全体塗装では縫製糸も塗装することになります。今回は糸色が少し濃くなっているのが比較いただくとお判りいただけます。
同色系の糸で縫製されている場合は、塗装をご了解いただいています。装飾糸になっている場合は「糸残し」という方法もご選択いただけますが、費用は高くなります。
お客様のお手元に届いた時にメールのご返信をいただきました。「先ほど届きました。大満足です!ありがとうございました。また機会があれば、よろしくお願いいたします。」というメールでした。特に色合いにについては気になっていたのですがご満足いただけたようです。
その後のメールでファスナー(チャック)部のやり取りをさせていただき「とりあえずこのまま使ってみます。」という事になりました。不具合があれば改善させていただくのは当然のことです。その場合のデメリットもご説明するのも必要な事だと思っています。

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