2025-05-15 / 最終更新日時 : 2025-09-04 knishikawa ブランドバック LANCELバッグの持ち手根本の作り替え ランセルのバッグをお持ちいただきました。長くお使いのようで、それなりの傷みは見受けられます。 お持ちいただいた理由はこちらの写真でお判りいただけます。持ち手の根本の革が切れてしまっています。 切れている部分をピックアップ撮影してみました。この部分だけを交換すれば使えるようにはなります。 しかしながら他の根本も傷みが激しいため、いつ切れてもおかしくありません。そのため、お客様とお話しした結果、4箇所全てを強くして欲しいということでした。 切れた根本を全交換するためには加工時間がかなり多くなってしまいます。そのため、根本の革は残した状態で別物の根本を新たに取り付ける方法で決まりました。 本革で作る事も考えましたが、オリジナルと同等の強度を確保しながら、なるべく費用を抑えるために合成皮革を加工する方法を採用することにしました。 合成皮革をどのように使うかを考えながら型紙を作り、修正を繰り返しながら合成皮革の裏側にカットのための線引きが完了し、一部の折り返して接着する部分に接着剤を塗っていきます。 少しづつカットを開始し、接着する部分を折り曲げて、ローラーを使って圧着していきます。折り曲げを多くしているのは理由があります。①合成皮革の端面を極力出さないため②一部は合成皮革が二重になりますので、強度が高くなること③接着面を多くすることで、剝がれにくくすることが目的です。お客様のご要望の「強度」については十分に確保できたと思います。 合成皮革で作った根本を2本のカシメ金具で止めて完了になります。オリジナルの根本は取り外さずにその上から新しい根本を取り付けているのは工数削減と取り外した後の糸穴が本体に残るのが嫌だったからです。 だったらオリジナルの革と同じ形状にすればというお言葉も聞こえてきそうですが、それには最低でももう1本のカシメ金具を打たなければなりませんし、合成皮革の加工工数も上がってしまいます。 オリジナルと同程度以上の強度と、加工工数を下げてコストダウンを図る事が今回の目的でしたが、型紙を作った段階で想定以上に時間を使ってしまいました。型紙は量産するためには必要ですが、今回の4つの部品作成のためには、逆に加工工数を上げてしまったようです。 新しい根本はオリジナルの根本の上にカシメ金具で止めていますので違和感は否めません。それでもお客様には喜んでいただけたようです。色々な修理方法が考えられる中で今回採用した方法は「強度」を重視したものです。お客様とのお話し合いの中で決めたものですが、長くお使いいただける事を祈ってやみません。