COACHキーケースの合成皮革補修

コーチのキーケースをお持ちいただきました。外観はそれほど傷んでいるわけではありません。

反対側も大きな傷みはありませんでした。

しかし、内側を拝見するとボロボロの状態でした。
内側の素材は合成皮革で、表面がパラパラと剥がれるような状態でした。合成皮革はこのようになってしまうと、まずは表面部を全て剥す必要があります。

剥した合成皮革の表面がこちらです。丁寧に剥さないと表面の下の部分を傷めてしまいます。そうなると下処理にあまりにも時間が掛かってしまいます。

表面のピンクの部分を完全に剥し終えた状態です。ここにオリジナルに近い色を塗装するのですが、表面下は綿のような素材で、合成皮革でも珍しい素材でした。

キーを収める金具周辺もキチッと表面を剥しておく必要があります。こういう作業を怠ってしまうと、新しい塗料と一緒に剥がれてしまうので注意が必要です。

キー金具の裏側は繊維系の生地でしたので、塗料が掛からないようにしなければなりません。しかし、その近辺は合成皮革の表面と同じ色でしたので、丁寧に表面を剥す必要があります。

塗料で表面塗装していきますが、凹凸があってはいけないところに、凹凸がしっかりと出てしまっています。
その理由は合成皮革の表面下が綿のような素材だったからです。これでも10回程度は塗装していると思います。

何度も何度も塗装して、削っては塗装を繰り返すという作業を行っています。
おそらく30回以上繰り返して、ようやく表面の凹凸がオリジナルに近く(と思われる状態)なりました。表面の光沢も艶消しにしましたのでオリジナルに近寄ったのではないでしょうか。

比較いただくために反対側もピックアップ撮影しておきました。少し凹凸がありますが、折り部のため仕方ありません。

内側全体を撮影したのが、こちらの画像です。凹凸が明らかに改善しているのがご確認いただけると思います。
合成皮革もこのように施工できますが、本革と違って表面がボロボロになってしまった場合は、今回同様に表面をキレイに剥すことが必要になります。そこにも施工費用が掛かってしまいますし、合成皮革の表面は厚いため、オリジナルに近づけるためには本革の何倍も塗装する必要がありますので、本革よりも施工費用が高額になる場合があります。

お客様にお渡しすると「こんなに綺麗にしていただいてありがとうございます。」と言っていただけました。
こちらの一品は奥様の形見のお品だったのです。コパ切れの処理も行って、オリジナルに近い状態になったことを本当に喜んでいただけました。