ORSETTOショルダーバックのベルト補修

オルセットのサコッシュショルダーバッグをお持ちいただきました。本体に傷みは見られませんでした。

お持ちいただいた理由はこちらです。ショルダーベルトがほとんど切れてしまっています。
ショルダーベルトの取り付け方は縫製というのがお判りいただけます。

しかしながら、縫製している場所の表側に糸は見えません。こちらは内縫いになっているからです。オリジナルと同じように外に糸が見えないように修理(リペア)するためには、かなり分解しないとなりません。分解の程度が多くなると、当然組立に時間が掛かってしまい修理(リペア)費用も高くなってしまいます。その点をお客様にお話しすると「そんなに高い物ではないので、他の方法で安く修理(リペア)できませんか?」というお話になりました。

お客様とのお話し合いの結果、修理(リペア)方針が決まり、ご発注いただきました。
まずはショルダーベルトをカットします。ベルトの構造を確認すると上下の革で黒の布生地を挟み込んであります。革だけで作られている物も多いのですが、布生地を挟むことで引っ張り強度が上がります。

しかしながら、メーカーさんが見ておられればぜひとも改良いただきたい点が2つあります。
まず一つは本体の口締めベルトよりもショルダーベルトが細い点です。デザインを重視されての事とは思いますが、せめて同じサイズにしておけば強度は格段に上がったと思います。
もう一つはショルダーベルトに縫製を入れて欲しかったという点です。3枚合わせのベルト革のため、接着だけではコパが外れてくるとベルト革が開いてしまいます。

今回、お客様と合意できた修理(リペア)方法がこちらです。金属の両面カシメで止める方法です。
こちら側はショルダーベルトに傷みが無かった方です。両方を同じ加工をするために敢えてカットしました。

こちらがベルトが切れかけていた方です。カットしたベルトの端面は綺麗に直線カットしてあります。しかし、コストダウンのために端面のコパ処理はしていません。

両方のベルトをカットして同じ加工を施した理由が、こちらの画像でお判りいただけると思います。左右の同じ場所に両面カシメを施すことで、まるで最初からこの作り方とデザインのように見えませんでしょうか?

これが全体画像です。お客様もご満足いただけたようでした。
金属の両面カシメをご覧になって「これなら前より強そうですね。」と言っていただけました。ただ、カシメ金具を使うために、ベルトの3分の1に穴を開けていることから「その点はあまり変わらないと思います。」としかお答えできませんでした。
また、今回の加工でベルトが短くなった分、ショルダーベルトの長さ調整用の穴を一つ追加する加工も行っています。こちらもお客様とのお話し合いの中で確認しています。
このように、簡単そうに見える加工でも、お客様と修理(リペア)方針を決めるには時間が掛かりますのでご理解いただければ幸いです。