2024-01-19 / 最終更新日時 : 2024-01-29 knishikawa こんな補修も BOTTEGA財布の引き手作成 ボッテガの長財布をお持ちいただきました。使い込まれていますが、表面の革の傷みは見られません、 ファスナーもスムーズに動きますし、擦れも少なく大事に使われていたことが十分に判りました。お客様の話によると10年くらいお使いとの事でした。 お持ちいただいた理由はこちらの引き手を作って欲しいという事でした。引き手の作り方を見てみると、金具にギリギリ入る大きさの革が使われており、ぐるっと一周の縫製がされていたり、革の端面はコパ処理がしてあったりと様々な手間が掛かっています。 引き手を横から撮影すると、革の切れている部分が確認できます。外側の革が切れているのに、引き手が切れないのは内側に布が入っていると思われます。色はブルー系でした。お客様とのお話し合いの結果、形状は現在と同様で、縫製やコパは無しで良いという事になりました。切れている状態から、裏に合成皮革を入れる事もご提案しましたがご選択いただけませんでした。表面の色についてはブルー系が好ましいがブラックでも良いという事になりました。 弊社では外観を重視するために、外した革の引き手を表面に使う施工も行っていますが、今回は形状だけを指定いただきました。そのため、元々付いていた引き手はカットして、新しい引き手の型紙として使用する事をお客様にご了解いただいています。 引き手をカットすると、金具の形状が判ります。それほど大きな金具ではないので、元々の引き手の形状は重要です。 型紙方式で作った新しい引き手を金具に通した状態です。革裏と革裏を接着させれば、今回のお客様のご依頼内容は完了になります。 接着剤を入れて半分に折りたためば完了ですが、今回は縫製が無い作り方のため、接着が非常に重要です。そのため、接着力向上のために全体を圧着することで接着力を上げています。 取付完了後はこのようになります。今回はブラックでも良いというご了解をいただいていましたので、金具に通す事ができるなるべく厚い革を使用することで引張強度を上げています。しかし、合成皮革を入れていませんので、強度は全て革の力に依存することになります。また、端面のコパも入れなくて良いという事でしたので革の端面はカットしたままの色になっています。 上方向から撮影するとこのようになりました。縫製されていないことがお判りいただけます。また、色もブラックという事がご覧いただけます。 オリジナルの引き手を左側に置いて撮影したものです。右側は本体色に近いブルー系の革です。最初は右側の革を採用しようかと思ったのですが、革目がオリジナルとかなり異なりましたので、今回は革目を合わせるためにブラック色を使うことにしました。表面塗装は弊社の得意とするところですが、今回はお客様のご予算の関係でカットすることになりました。弊社はお客様のご予算に合わせた施工を心掛けていますので、コストダウンについてもご相談いただければご説明させていただきます。今回は大幅に加工内容を削減していますが、必ずしも全てのリペアでコストダウンできるわけではありません。特に材料購入が必要な場合やお客様のご要望を満たすための施工を優先するリペアはコストダウンできないこともありますのでご注意ください。今回コストダウンしたところを列挙すると下記の通りになります。★縫製なし★裏側の強化なし★コパ(端面)処理なし★表面塗装なし★社内にある材料使用こんなに小さな引き手でもここまでコストダウンを行っています。逆に考えると、全ての施工内容を行うとこんなにも沢山の手を掛けている事がお判りいただけるのではないでしょうか。後日談ですが、お客様から「色がブラックなのはやはり違和感がありますね。」というお話をいただきました。「取り外した引き手の革が残っていたら送って欲しい。」という事でしたが、写真のようにカットしてサイズだけを型紙として使用し、その後は廃棄(残しておいても使うことは無い)してしまいましたのでお客様にはお返しできませんでした。 Follow me!